様々なプロジェクトや、技術開発や、製品が生まれています!
諏訪バーチャル工業団地がお手伝いをしています!

長野県岡谷工業高校 電気工学クラブ

諏訪バーチャル工業団地は、岡工のロボット部へ技術支援しています。

岡谷工業高校へリンク

岡谷市駅前の「テクノプラザおかや」に展示中です。

★ 記事が掲載されています
 

市民新聞 (2001年12月21日掲載)

 

岡工電気工学クラブの相撲ロボット3台が、「第13回全日本ロボット相撲大会」(23日、東京両国国技館)に出場する。

 約2,500台の中を勝ち進み、昨年に引き続き二度目の全国出場を果たした。前回は二人がベスト16に残っているだけに活躍が期待される。

(以下、略)

 

市民新聞 (2000年10月16日)

  岡谷工業高校電気工学クラブは、このほど開かれた県内の工業系高校などによる「第8回ロボコンIN信州」の自立型相撲ロボットの部で、3年連続優勝を果たした。同クラブは一ヵ月後に迫った全国大会などに向け、さらにロボットの強化を進めている。
★ 「相撲ロボットの製作 2000」資料です。
相撲ロボットの製作 2000   ”夢はアメリカ世界に飛び出せロボット力士”
 

長野県岡谷工業高等学校
 電気工学クラブ 相撲班

   白鳥 佳和
   八幡 塁
   林  領射
   宮坂 悟史
   小松 勇貴

1.はじめに
   ロボット相撲とは、(株)富士ソフトABCと全工協が主催する大会で、直径154cmの土俵上で、2台のロボットが相撲をとる競技である。平成2年より開催され今年で12回を数える。岡工電気工学クラブでは、平成6年よりこの大会に出場している。競技方法は、相手を土俵場外に押し出すことにより有効一本となり、3分間の3本勝負で試合が行われる。ロボットの規格は、幅20cm、奥行20cm、高さ自由、重量3kg以内のロボットである。ここで、相撲ロボットの製作と題して簡単に報告する。
2.ロボット製作について

 (1)シャーシ
 
写真:完成したシャーシ

 シャーシは、駆動系、吸着系や対戦時の衝撃力からさまざまな力を受ける。特に吸着系からは垂直方向へ60kgを上回る力が働き、そこから生み出される推進力は、20〜30kg以上に達する。この数値は、重量3kgのロボットから考えるとシャーシの負担は大変なものである。この為、それらの力を支える剛性がシャーシに求められる。

 昨年までは、板厚3oのA7075の平板を使用していたが、今年は板厚2mmのA5052の柔らかくねばりのあるものに変え、折曲げによって剛性強化と軽量化を両立した。シャーシのスペックは、D178mm×W200mm×H37mm重量223gである。昨年問題になっていた吸着時のシャーシの歪みは、解決され、吸着力がタイヤへ更に伝わる様になった。問題点として板厚を薄くしたことと、やわらかい材質に変えたことでネジ山が簡単につぶれ、ネジ止めが効かなくなる所が出てきたことである。

(2)ギヤボックス
 
写真:リベンジャーのギヤボックス

  ロボット相撲の大会は、毎年同じルールで行われるため、年々吸着装置の技術レベルが上がっている。強力な推進力をもつロボットが多数を占める中で、それに押し勝つためのロボットを作るには「力のあるモータ」に変える必要があると考えた。市販の高出力モータをギアボックスとセットで考えると「大きくて重い」物を使用しなければならなくなり、ロボットの重量を3kg以内に収めることやコンパクトにすることが困難となる。そこで、今年は自作軽量ギアボックスの製作を行うことにした。

 ギアボックスのフレームには、アルミの角パイプを使用しその中にプーリ・ベルト伝達機構とウォームギア機構を収めた。加工は、非常に精度を要求されるため、汎用フライスにて行った。この加工は、部品単体の精度と組み立て精度が要求されるため、機械効率の良いギアができるまで何度も造り直した。このギアボックスの減速は、1次にプーリ、2次にウォームギアの2段で行っている。この減速比によって、低速パワー型からスピード攻撃型まで自由にロボットのタイプを決めることができる。同クラブでは、低速から中速までのロボットを各自の設計コンセプトに合わせそれぞれ製作を行った。駆動用モータは、maxon製モータ90[W]を2個使用した。

(3)タイヤ
 
写真:ホイールとタイヤ

  タイヤは、高出力モータの推進力を土俵に伝達する一番重要な部品である。去年までは、アルミ製ホイールに自転車のゴムチューブを巻いたものを使用した。このタイヤは、強い吸着や押し合いの時にタイヤが空転し身動きが取れなくなることがしばしばあった。主な原因は、このタイヤの動摩擦係数が小さいものと推測する。そこで今年は、性能を向上させるとともに摩擦熱を利用してグリップ力が上昇するタイヤを研究開発した。業者にいろいろな素材のタイヤを頼んで作ってもらい実験を繰り返した。その中から、2つの素材を選定した。天然ゴムと工業用ゴムである。前者は、静止摩擦係数と動摩擦係数ともに優れ、熱によってグリップが向上する性質があることがわかった。欠点として、摩擦係数が高すぎるため旋廻性が悪くなること、耐久性や経年劣化に弱いことがわかった。後者は、耐久性と経年劣化に強いものの、グリップや摩擦熱に弱いことがわかった。そこで、天然ゴムと工業用ゴムを配合したタイヤを特別に作っていただいた。二つの組み合わせによって、天然ゴムの摩擦係数の高さと工業用ゴムの耐久性を兼ね備えた質の高いタイヤに仕上がった。このタイヤは大会で圧倒的な推進力を発揮した。

(4)電子回路
 
写真:Auの電子回路

  電子回路は相撲ロボットを制御する上で大切な部分であるとともに、立ち会い時の衝撃やノイズに対して安定した動作が要求される。今回ロボット制御には日立のH8/3048マイコンを使用した。

 ロボットの電子回路は主に次のように分けることができる。まずマイコンへの情報入力部分として、敵を見つけるための光電センサ回路、土俵からロボットが落ちないための床面センサ回路、ロボットに指示を送るためのスイッチ回路、バキュ−ムの吸圧をコントロールするための圧力調整回路。マイコンから命令を出力する部分として、モータを駆動するための駆動回路、マイコンの動きを知るためのモニターLED回路、真空ポンプモータを制御するFET回路から構成されている。モーターを駆動するための回路は、当初リレーを使用していたが、モータの始動時や過負荷状態時に大電流が流れ、リレーの接点が溶解接合によりショートすることがしばしば起きた。その為、急遽FETによりモータを制御することにした。これにより、大電流による破損が無くなったわけではないが、リレー時より信頼性は向上したと考える。

(5)吸着装置
 
写真:GARDENの吸盤

  岡工力士の押しの強さの秘密はここにある。重量3kgのロボットに仮想重量として吸盤の吸着力を付加することにより、タイヤの接地圧を上げ推進力を生み出している。吸着力は、吸盤の面積と吸圧より約60kgと計算される。この吸盤の役目は、推進力をアップさせる効果の他に、相手ロボットから押し出されにくくする働きを持っている。吸盤表面と固定プレートには特殊なコーティングが施されている。これは垂    平方向移動に対して、吸盤の摩擦抵抗を軽減し推進力の低下を押さえるように工夫されている。また土俵のコンディションや対戦相手に応じ真空ポンプの吸圧と流量をコントロールしている。

(6)装甲と色(コーティング)
 
写真:ロボット外観

 前面の黒い装甲は板バネ材用のステンレス鋼を使用し、相手のロボットの下をすくい上げ易い構造になっている。ここは7年間のノウハウの結晶である。側面カバーは、アクリル板を使用し、側面攻撃からギアボックスを保護する働きをする。

 ロボット全周の色とコーティングは、光センサからの“ステルス効果”を狙っている。昨年より続いている研究テーマである。昨年は、“光を吸収”する方向で製作を行った。つや消し黒色塗装の表面に微細な凹凸をつけ、光を乱反射させセンサ光の戻りを極力おさえるものであった。しかし、検出距離は1/3程度になったものの接近戦では効果はなかった。また、ロボット同士の取り組みで傷がつき凹凸が取れ、散乱効果を損なうことがあった。今年は発想を変え“光の全反射”とした。全つや黒色の自己治癒性コーティングを全周の装甲に塗布した。前面と側面に反射角をつける事により、センサ光を全反射し“ステルス効果”を得る事に成功した。実験では、光センサの反応距離が1cmに縮った。また、自己治癒性により対戦中の細かい傷が2〜3分程度で復活した。このことは、傷による光の乱反射を防ぐ効果があると考えられる。

(7)ソフトウエア
 
写真:ソフトウェア開発中

 ソフトウェアはロボット力士に「技と知恵」を授ける部分であり、ロボットをどのように動作させるかはここで決まる。どんなにハードウエアが良いロボットに仕上がっても、ソフトウェアが良くないと強いロボットにはならない。プログラム開発には沢山の時間を必要とする。大会前まで、「どうしたら勝てるだろうか」と苦戦しながらプログラミングを行う。プログラム開発には、アセンブラ言語を使用した。

 先ずプログラムの概略を説明する。最初にロボットをどの様に動かすかを人間が作戦を立て、予め組んでおいたプログラムをセレクトする。後は組んだプログラムで相撲を取ることになる。動作の仕組みは、光電センサで敵を見つけてその方向にロボットを向かわせる。土俵際までロボットが来ると、床面センサが白線を感知して方向を変える。これを繰り返すことで敵を土俵から押し出す仕組みになっている。しかしこれだけでは勝てない時がある。両者とも譲らず押し合いになる事がよくあり、その為バッテリーを消耗してしまったり、ロボットに大きな負担をかけてしまったりする。そこで考えたのが、敵と押し合っている間モータを時々止めると言う方法である。このプログラムはパワーセーブモードと呼んでいる。このプログラムの導入により、ロボットへの負担も減り、逆に敵を押し出せる場面もあった。この様にソフトウェアはとても重要なものである。残念ながら、一度に”アイボ”のような優れた機能を持つプログラムは作れないが、それを目指すことは、人間の立ち振る舞いに近いロボット力士を造ることにつながるだろう。

3.ロボット性能評価
 
写真:窓を登るAu

  今年一番の研究成果はタイヤである。浮き土俵でも空転することなく動きの取れるタイヤについて研究した。この研究によって浮き土俵に負けないタイヤを作ることができた。大会ではその力が十分発揮された。 シャーシは、折り曲げ加工したことによって吸着時の歪みが無くなり、タイヤへの接地圧が更に増加した。縦の歪みについては、ギアボックスによって解消した。 この吸盤とポンプは人の手で引っ張っても取れないほどの力を持っている。そのため、壁に付けても落ちることなく、そのまま移動することができる。このことは、相手に押し出されにくくする「防御」とタイヤに接地圧を与えることで、高い推進力を得る「攻撃」の働きをもつことを意味する。

 装甲は、相手の赤外線センサで発見されることなく相手の横に忍び寄る効果をもっている。大会では、このステルス効果を確認できる場面があった。ただし、超音波センサを搭載したロボットに対しては、効果はないと考えられる。

 高出力モータを2個使用して、ギアボックスにより四輪駆動を実現した。この組合せは、力強い押しを生み出したが、予想以上の過電流によって電気ケーブルが焼損する場面があった。

4.大会成果
 
写真:全国ベスト8を目指す白鳥選手

8/26 新潟自然科学館主催ロボット相撲大会
自立型
優勝:小松勇貴(秋乃誉)
3位:白鳥佳和(GARDEN)

9/17 全日本ロボット相撲 東海地区大会
   全日本の部 自立型
4回戦出場
3位:OB 山田稔(諏訪大社春宮)

9/24 全日本ロボット相撲 北信越地区大会
   高校生の部 自立型
優勝:白鳥佳和(GARDEN)
準優勝:宮坂悟史(Au)
以上2台は徳島全国大会へ
   全日本の部 自立型
準優勝:宮坂悟史(Au)
5位:林領射(電工丸二千)
以上2台は両国国技館全国へ

10/1 全日本ロボット相撲 関東地区大会
   全日本の部(ロボフェスタプレ大会)自立型
4回戦出場
準優勝:顧問  (諏訪大社秋宮)

10/8 ROBOCON in信州2000 
   ロボット相撲自立の部
優勝:宮坂悟史(Au量産型)
3位:林領射(電工丸二千)
   八幡塁(復讐者)

11/12 高校生ロボット相撲 全国大会
自立型
ベスト8:白鳥佳和(GARDEN)
ベスト8:宮坂悟史(Au)

12/23 全日本ロボット相撲 全国大会

    自立型
    ベスト8:白鳥佳和製作(諏訪大社春宮)
ベスト16:宮坂悟史(Au)
ベスト16:林 領射(電工丸二千)
ベスト16:赤羽 治(諏訪大社秋宮)

5.おわりに
 
写真:稽古の一場面

  平成2年より始まったロボット相撲大会も、年々レベルが上がっている。勝てるロボットを造ること  は容易なことではない。全国のロボットを見てみると、年々高速かつハイパワー型のロボットが増えてきている。そのため高速かハイパワー型に片寄ったロボットでは簡単に勝負に勝つ事ができない。昨年は低速型ロボットを作ったが、今年は中速型のロボットに設計コンセプトを変更した。どうしたら勝てるロボットになるかと考えたとき、バランスのとれた中速型のロボットが良いだろうと考えたからだ。その成果として、同クラブ関係から延べ6台が全国に出場することができた。しかし、まだ相手を思う様に押し出せなかったり、高速ロボットに回り込まれてしまったりと、まだまだ問題点が残っている。来年へ向け改善を図りたいと考える。ロボット相撲を見ていると確かに高速なロボットの方が有利な場合が多い。しかし来年から土俵が鉄板になる事を考えると、これからも高速型ロボットが有利になるとも限らない。今までと違ったロボット相撲になるになることだろう。これからさらに相撲ロボットは進化して行くに違いない。電気工学クラブは“アメリカ場所”を目標にこれからも頑張って行きたい。

6.顧問より
 
写真:NRSC技術交流会

   ロボット競技会は“技術力と研究成果”を証明する場である。今まで以上に今年の成果を押し上げたのは、3年前より始めた“学と学”の技術交流と各専門分野で働く技術者との交流“産と学”が実を結んだものと考える。特に諏訪地区の中小企業がインターネットに集う‘バーチャル工業団地’への加入は私の想像をこえるスピードで、技術レベルを押し上げた。「私の持つ技術レベルの範囲を生徒たちが飛び越えた」と言うのは過言ではあるが、産の技術者が我々に熱く語る言葉の中から、技術の授々はもとより、探求する精神と最後まで粘り強く課題を克服する姿勢を学びとることができた。

 最後に 御仕事の忙しい中、相撲ロボットの製作にお手伝いいただいた皆様に感謝申し上げ本レポートの結びとする。



諏訪バーチャル工業団地への参加申し込み先 : info@svip.ne.jp
Copyright (C) 2002 SUWA VIRTUAL INDUSTRIAL PARK. All Rights Reserved.